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松江地方裁判所 昭和59年(わ)12号 判決 1984年6月20日

裁判所書記官

船越禮爾

本籍

島根県大田市大田町大田イ三五七番地一

住居

右同町吉永一五九三番地

土木工事兼粘土販売業

須山征夫

昭和一八年一〇月二日生

右の者に対する所得税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官松本佳典、弁護人矢田正一各出席のうえ審理を遂げ、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一〇月及び罰金八六〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金四万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判の確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、大田市大田町吉永一、五九三番地において、須山商事の屋号で土木工事及び粘土販売を業とするものであるが、仮名の預金を設定するなどして所得の一部を秘匿したうえ虚偽の所得税確定申告書を提出する不正行為により、自己の所得税を免れようと企て

第一  昭和五五年分の実際の所得金額は三、七四一万三、八六〇円で、これに対する所得税額は、一、五七五万二、五〇〇円であったにもかかわらず、同五六年三月五日、大田市大田町大田イ二八九番地二の所轄石見大田税務署において、同税務署長に対し、同五五年分の所得金額が五三五万二、四四一円で、これに対する所得税額が六七万六、〇〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、よって、同年分の正規の所得税額との差額一、五〇七万六、五〇〇円を免れ

第二  同五六年分の実際の所得金額は二、七九七万六、〇八一円で、これに対する所得税額は九七七万九、〇〇〇円であったにもかかわらず、同五七年三月一五日、前記石見大田税務署において、同税務署長に対し、同五六年分の所得金額が九四九万一、四八八円で、これに対する所得税額が一八九万五、九〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、よって、同年分の正規の所得税額との差額七八八万三、一〇〇円を免れ

第三  同五七年分の実際の所得金額は三、五八八万三、五〇六円で、これに対する所得税額は一、四二七万〇、三〇〇円であったにもかかわらず、同五八年三月一四日、前記石見大田税務署において、同税務署長に対し、同五七年分の所得金額が八九一万七、〇二八円で、これに対する所得税額が一七六万五、〇〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、よって、同年分の正規の所得税額との差額一、二五〇万五、三〇〇円を免れたものである。

(証拠の標目)

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人(四通)、青木扶美枝、藤原誠及び長谷川重信(二通)の検察官に対する各供述調書

一  被告人(一一通)及び青木扶美枝(三通)の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(三通)及び脱税額計算書説明資料(証拠等関係カード記載番号5)

一  被告人作成の所得税の修正申告書(昭和五五年分ないし昭和五七年分。いずれも謄本)

一  押収してある所得税確定申告書三通(昭和五九年押第一一号の1ないし3)

(法令の適用)

被告人の判示第一の所為は、行為時においては、昭和五六年法律第五四号脱税に係る罰則の整備等を図るための国税関係法律の一部を改正する法律による改正前の所得税法二三八条(一二〇条一項三号)に、裁判時においては右改正後の所得税法二三八条(一二〇条一項三号)に該当するが、右は犯罪後の法令により刑の変更があったときにあたるから刑法六条、一〇条により軽い行為時法の刑によることとし、判示第二及び第三の各所為はいずれも右改正後の所得税法二三八条(一二〇条一項三号)にそれぞれ該当するところ、以上につきいずれも所定の懲役と罰金とを併科することとし、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により刑及び犯情の重い判示第三の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条二項により各罪所定の罰金額を合算し、その刑期及び金額の範囲内で、被告人が既に本税、重加算税などを納付していることを斟酌し、被告人を懲役一〇月及び罰金八六〇万円に処し、右罰金を完納することができないときは、同法一八条により金四万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとし、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。訴訟費用は、刑事訴訟法一八一条一項本文を適用して被告人に負担させる。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 田中恭介)

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